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東京入国管理局によるトランスジェンダー差別と人権侵害に抗議する声明

東京入国管理局によるトランスジェンダー差別と人権侵害に抗議する声明



こんにちは。ふぇみ・ゼミ×トランスライツ勉強会(@femizemitrans)です。わたしたちはフェミニズムにおけるトランスジェンダー(特にトランス女性)差別・排除に抵抗するために集まった、ふぇみ・ゼミ生と運営メンバーによる有志グループです。現在は、定期的な内部勉強会と、トランス差別に抵抗する上での具体的な方法をまとめたガイドブックの作成作業、Twitterでの情報発信などを行なっています。


わたしたちがこの声明を書くことになったきっかけは、Smash NyukanTokyo (@SitShinagawa)さんの呼びかけで先日おこなわれた #0710東京入管前抗議です。この行動にメンバーの一人が参加し、そこでの経験を他のメンバーとシェアしました。このことから、現在入国管理局(以下、入管)が行っている外国人差別・トランスジェンダー差別とそれによる人権侵害に、明確に抗議しなければならないと痛感しました。

よって、わたしたちは、東京入管に収容されているトランス女性・パトさんに連帯し、入管の暴力と抑圧に抗議します。


現在、日本の入管では、オーバーステイなどの名目で移民や難民を無期限に収容し、問題を指摘されているにも関わらず、収容者への度重なる人権侵害が行われています福島みずほ議員の公式ホームページによれば、2019年6月末の時点で、1253名の人が全国の入管内施設に収容されています。

被収容者の中には、自国で危機的な状況におかれたために、安全な生活を望んで逃れてきた人々も含まれます。送還されれば命を脅かされる危険さえあるのです。しかし、日本政府はそのような人々に適切な在留資格を付与しないどころか、それを不法滞在として犯罪化することによって入管に収容してしまいます。東京の品川や茨城県牛久など日本各地にある収容所では、そのような人々の自由が奪われ、不当な暴力が振るわれるなどといった人権侵害が日常的に行われています。こういった入管の対応に抗議するため、これまでに複数の被収容者がハンガーストライキを行なってきました。そしてそれは、2019年6月24日に長崎県大村入管に収容されていたナイジェリア人男性が餓死する事態にまで至っています。


また被収容者には適切な医療も届けられていません。2014年1月には、東日本(牛久)入管でカメルーン人の男性被収容者が死亡しました。”I'm dying”(死にそうだ)と繰り返し訴えた彼を、職員らが放置し続けたためです。後述するパトさんへのホルモン注射拒否からも、被収容者への医療提供が不十分であることが見てとれます。

ただでさえ被収容者にまともな医療が提供されてこなかったことを見ると、COVID-19が猛威をふるっている現在においても仮放免の許可がおりずに収容され続けている方たちが心配でなりません。実際に、収容されている方たちは入管の感染対策の不十分さを訴えています。

こうしたことから、わたしたちは、まず入管が行っている外国籍の方々に対する長期収容および暴力・虐待が問題であると考えています。


加えてわたしたちは、パトさんへの虐待がトランス差別に由来したものでもあると考え、深刻な問題として認識しています。


入管の収容所には、ほとんどの被収容者が入れられる雑居房の他に懲罰房という部屋があります。入管が被収容者を懲罰房に入れる理由としてはハンガーストライキを行ったことなどが挙げられますが、これまで他の被収容者が行ってきたハンガーストライキは入管の待遇の悪さに抗議するためのものであり、そもそもわたしたちはそれを懲罰房に入れられるべき理由だとは考えていません。

その上で、パトさんは入管に収容される際、「懲罰」を受ける理由がなにもなかったのにもかかわらず、6ヶ月間懲罰房に入れられました。そこから出されたあとも、他の被収容者と接触することのないよう独居房に収容されました。今も、他の被収容者の自由時間が7時間なのに対し、パトさんにはたった2時間の自由時間しか与えられておらず、孤立させられています。そして、残りの22時間を鉄格子のついた狭い部屋に閉じ込められて過ごしています。

ハンガーストライキをしていたわけでもないパトさんが懲罰房に入れられたのには、入管の他の恣意的な理由があったとしか考えられません。わたしたちは、入管は、パトさんがトランス女性であることを理由に、彼女に「罰」を与えたのだと考えています。


入管のトランスジェンダーに対する無知と無理解は以下のような点でも露呈しています。


パトさんには、注射によるホルモン投与が認められておらず、彼女はそのことで心身に不調をきたしています。ホルモン投与は、彼女がのぞむ姿ですごすために必要なものです。こうした対応は、パトさんの尊厳を著しく傷つけ、激しいストレスを与えています。決して許されるものではありません。


フィリピン出身でトランス女性であるパトさんは、外国人差別とトランスジェンダー差別の交差点に立たされています。日本やフィリピンを含む多くの国で、トランスジェンダーは苛烈な排除の対象となり、ヘイトクライムの被害に遭っています。外国人差別とトランス差別のどちらか片方だけではなくその両方に注意や関心を向けなければ、彼女の置かれた状況を正確に理解し、抗議することができません。


わたしたちは、こういった入管の差別、暴力、抑圧に強く抗議するとともに、すべての被収容者の自由と人権が当たり前に尊重されることを求めます。外国籍の方々を無期限に長期収容し、まともな食事も医療も提供せず、ましてや平和的な話し合いを求めた被収容者たちを暴力で制圧するなどあってはならないことです。これ以上「誰も殺すな!」*1。

わたしたちは、パトさんとすべての被収容者が一刻もはやく自由を取り戻すことを願い、入管の解体と被収容者の解放をめざしてたたかいます。


“No justice, No peace! ”*2



*1*2 これらは抗議行動で使われたコールの文言で、入管の暴力、差別問題を可視化されたアクティビストの方々、また、これまでの抵抗へのリスペクトと連帯の意志を込めて記載しました。


ふぇみ・ゼミ×トランスライツ勉強会(@femizemitrans)

2020年7月18日



参考記事


収容ってなんですか?弁護士に聞く収容問題 − 認定NPO法人 難民支援協会


国連の拷問禁止委員会の勧告に対する政府の対応及び入国管理局での収容実態等に関する質問主意書:質問本文


【衝撃映像】入管施設での集団暴行ー「痛い!」「殺さないで!」難民男性が絶叫の地獄絵図(志葉玲) - Yahoo!ニュース


外国人収容施設における収容の長期化について(2019年6月末現在)


横行する法務省・入管職員による暴力、いじめー被害者の難民が証言、自殺未遂も(志葉玲) - Yahoo!ニュース


日本:入管施設で長期収容に抗議のハンスト198人 : アムネスティ日本 AMNESTY


<牛久入管で何が…長期収容される外国人> (3)医療届かず 放置で死亡:東京新聞 TOKYO Web


入管収容施設にトランスジェンダーの被収容者。24時間中、22時間を独房に閉じ込められ続ける(HARBOR BUSINESS Online)


入管の3密解消を 「部屋を分けて」17カ国の収容者が要望書:東京新聞 TOKYO Web


「トランスジェンダーも人間だ」-東京入管被収容者パトさんからの訴え(Mネット2020年4月号)


「膝で押さえつけ」「女子部屋に乱入、下着姿を撮影」入管職員の女性への暴行、セクハラ―森法相の責任重大(志葉玲) - Yahoo!ニュース







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